定期的に性行為を行なっているにもかかわらず、長期にわたって妊娠できない状態を「不妊症(ふにんしょう)」といいます。
不妊症の状態を引き起こす原因は、過度の疲れやストレスの場合もあれば、病気や障害が妊娠の妨げになっているケースもあります。
不妊の主な原因とその対処法・治療法について解説します。
<目 次>
正常な月経では、生理が始まってから13〜17日目の「排卵期」に、卵巣から卵子が飛び出す「排卵」が起こり、受精を待つことになります。
無排卵月経とは、こうした排卵を伴わない月経のことをいいます。
排卵以外の生理現象は正常に起こるため、通常の生理と同じく出血は見られますが、厳密には月経とは言えません。
排卵が起きず、それに伴うホルモン分泌量の増減も生じないため、基礎体温もほとんど変化せず、ずっと低温期であるのが特徴です。こうした状態を「一相性」といいます。
無月経とは全く月経(生理)がない状態のことです。
無月経には大きく2種類があり、18歳の誕生日までに「初潮(初めての生理)」が起きないことを「原発性無月経」といいます。性分化障害や染色体異常など、病気や遺伝子異常が原因であるケースが多いため、16歳くらいまでに初潮が起きない時は婦人科を受診しましょう。
もう一つが「二次性無月経」または「続発性無月経」と呼ばれるもので、通常は正常に生理があるのに、3か月以上生理がこない状態を指します。
生理中は体内で卵子が作られたり、子宮内膜が厚くなったり、受精が起きたりと、体に大きな変化が生じます。こうした変化は体内の様々なホルモンの作用によって生じ、ホルモンの分泌量が大きく変化する影響で生理痛などが発生します。
このように生理(月経)にはホルモンバランスが大きく関わっています。様々な要因によって心やからだに大きな負担がかかるとホルモンバランスが大きく乱れます。その結果、月経にも異常が生じるのです。
特に、疲労やストレスがたまっていたり、過度のダイエットやスポーツを行ったり、拒食症などによって痩せすぎた場合などによく起こります。
要因 | 対策 |
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過度の身体の疲れ | 十分な休息や睡眠をとる |
過度の精神的なストレス | ストレスを発散する ・適度な運動をする ・趣味に打ち込んだり、好きな事をする ・音楽を聴いたり散歩をするなどしてリフレッシュする 何をしても気分が晴れない時は、軽度の鬱(うつ)状態の可能性もあるため、精神科を受診して投薬治療を行う |
からだを冷やす | ・エアコンやクーラーは控えめにする ・重ね着をしたり、肌の露出を控える。ただし、きつめの服や下着は血行不良につながり逆効果となるため避ける ・身体を温める食品を摂る(参考:温め効果のある食品) ・ゆっくりお風呂に入る(特に下半身を温める。足湯なども有効) ・マッサージを行う ・定期的に軽い運動を行う |
不摂生・不規則な生活習慣 | ・暴飲暴食は控える ・過度の飲酒・喫煙をしない ・夜更かしはしない ・寝る時間や食事をする時間帯を決めて頻繁に変えない |
過度のダイエットや絶食 | ・三食しっかりとり、栄養バランスの良い食事をする |
子宮中央と卵巣を結ぶ卵管部分が、炎症や腫れによってふさがってしまい、卵子や精子の通行が阻害されて不妊に至るケースです。
腫れや炎症の原因となるものには、クラミジア感染症や子宮内膜症があります。
クラミジア感染症とは、クラミジア類の細菌による感染症で、主に尿路や性器に感染します。感染者との性行為、オーラルセックス、キスなど、粘膜を通して感染が広がるケースがとても多いです。
おりものが増えるのがクラミジア感染症の主な症状ですが、目立った自覚症状が出ないことが多く、感染が進行して他の病気も併発してから気づくことが多いので注意が必要です。
男性感染者の場合は、尿道から透明な膿が出たり、性器が痛むのが主な症状です。こうした男性と接触をもった覚えがある場合は、念のため産婦人科や性病科を受診しましょう。口をとおしての感染が疑われるなら耳鼻咽喉科です。
子宮内膜症については後述します。
子宮筋腫とは、子宮の壁にできる良性の腫瘍(しゅよう)です。30歳以上の女性の10〜25%は発症しているといわれます。
子宮の筋肉の色々な箇所にでき、形状も様々です。最初は小さな芽のようなものがだんだん発育して、不妊を含む色々な症状を引き起こすようになります。
<子宮筋腫が疑われる症状>
特徴的な症状は、月経時の経血量が異常に多くなり血の塊などが出る「過多月経」が長期間続くことです。他には生理時以外の出血、貧血、下腹部の痛みや違和感などがあります。
<治療法>
外科手術で筋腫を切除します。
<参考サイト>
より詳しい解説はこちら(外部リンク)を参照してください。
子宮内膜症とは、本来は子宮の内側にだけ存在する子宮内膜の組織が、違う場所に侵入して増殖した状態をいいます。
組織が増殖しやすい箇所は、卵巣、子宮壁内、骨盤腹膜です。
発生頻度の高い婦人科疾患です。
<子宮内膜症が疑われる症状>
特徴的な症状は、とても強い生理痛や、下腹部や腰の痛みです。ほかにも月経量が多くて持続期間が長くなったり、性交時の痛みなどが見られることもあります。
<治療法>
薬物療法と手術療法の2つがあります。薬物療法ではピルなどの内服薬で長期間月経を止めて内膜症組織を萎縮させます。薬物療法の効果がない場合や不妊の原因になっている可能性がある場合などは手術を行い、組織を摘出します。
<参考サイト>
より詳しい解説はこちら(外部リンク)を参照してください。
子宮にできる悪性腫瘍(がん)です。
子宮は膣に近い方を「子宮頸部(しきゅうけいぶ)」といい、妊娠時に胎児が発育する奥の方を「子宮体部」といいます。前者にできたがんを「子宮頸がん」、後者にできたがんを「子宮体がん」と呼びます。
<子宮がんが疑われる症状>
「生理時以外の出血が続く」、「おりものが増える」、「性交時の出血」などです。がんの初期は自覚症状がない場合が多いです。
<治療法>
ほかのがんと同じく、手術療法、放射線療法、薬物療法などで、がん組織を摘出または死滅させます。ガンが進行している場合は、進行具合に応じて子宮や周辺組織の摘出を行います。将来子どもが欲しい人に限っては、病変部分だけの切除に留め、子宮を温存することもあります。
<参考サイト>
より詳しい解説はこちら(外部リンク)を参照してください。
加齢に伴って卵子も老化します。卵子が老化すると、体内受精も体外受精も成功する確率は低くなります。
実年齢や外見が若くても、卵子がそれ以上に老化しているケースがあります。30代後半以降になると、この傾向が多くなります。
体に異常がなくとも、歳を重ねれば重ねるほど、どうしても妊娠の確率は低くなります。妊娠には適齢期(20代)がありますので、確実な妊娠を望む場合は早めに子作りに励むのが一番です。
不妊の原因の一つとして、男性の不妊症(造精機能障害や性機能障害)が挙げられます。
精子を作る機能が低い、または全く無い状態のことを指します。精子の奇形化なども含みます。
造精機能障害は男性不妊の原因の約9割を占めます。
精子をつくる「精巣」の外傷、炎症、腫瘍などが主な原因となります。人間の精子は高温に弱く、精巣炎(睾丸炎)や精索静脈瘤などの、睾丸の温度上昇を伴う病気によって精子をつくる機能が衰え、その結果、無精子症になるといったケースもあります。原因不明のものも約半分を占めます。
女性側に体調不良や病気などの症状が見られない場合は、念のためパートナーの男性にも一度泌尿器科を受診して検査を受けてもらうのが望ましいでしょう。
性機能障害(性行為障害)とは、何らかの原因により性行為もしくは射精ができない状態のことです。
勃起不全(インポテンツ・ED)、射精障害、真性包茎などがあります。これらについての解説は割愛します。
一般的な性行為ではどうしても妊娠できない場合の治療法、いわゆる不妊治療の主なものを紹介します。
事前に男性から採取した精液を、注射器のような器具を用いて人為的に子宮内に注入することによって妊娠を図る方法です。
「性機能障害によって射精ができない」、「精子の運動性や数に問題がある」、「女性器が狭く精子の通過が困難」などの理由がある場合に行われます。
通常は体内で行われる受精を、体の外で行う方法です。
「卵管の異常で受精ができない」、「人工授精などのあらゆる方法を試したが妊娠にいたらない」といった場合に行われます。
詳しい説明は省きますが、女性からは卵子を、男性からは精子を採取して体外に取り出し、人の手で精子を直接卵子に振りかけることで受精を行い、順調に育った受精卵を再度子宮内に戻して着床させるものです。
特に体外受精は母体への負担が大きい方法であるため、パートナーや医師とじっくり相談した上で実施を検討することになります。